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都立中高一貫校受検/都立高校上位校 受験専門 渋谷で創立30年

故郷別府

2019.05.03

◯故郷別府
 血気盛んな、高校時代を過ごした、思い出す日々。県下の御三家進学校に何も考えずにただ進んだ。合格発表の日は、あってあたりまえの番号を見つけた。なぜか柔道部に入り毎日激しい練習に明け暮れた。空手同好会というのがあって入れてもらった。新聞部に誘われて入る。いったん始めるとのめり込む。新聞部は夜暗くなって女子部員を送り届けるのが仕事になった。頼むから記事書かせてくれよと思ったが言えないままに終わった。部長は記事を書くことなんか期待していない、取材や帰りの女子のボディへガードだったのか、と思う。柔道は体重がなくて限界だった。自分でも何をしたいのかわからなかった。ただ少年の頃から、 旧帝大に憧れた。大分では、九大は難関として知られていた。わたしの高校では、毎年30人ほど受かっていた。東大は一番受かった時で7人が最高だったと思う。京大もそのくらいか。阪大や東北大学に行く者もいた。国立大だけで200人近く受かっていた。わたしのクラスの行った大学は、熊本大、長崎大、岡山大、広島大、神戸大、鹿児島大、大分大と多岐に渡った。そういえば金沢大に行ったヤツもいた。わたしの通った高校はそういう高校だった。

 中学の同級生には、東大、阪大、九大などに行ったのがいる。ほとんどが高卒か、二流大だった。小学の同級生が、3人九大に行った。一人は医学部で、今別府で病院長やってる。一人は文学部で、今神主やってる、神社の跡取りだ。一人は商社だった。小学の同級生に二人東大に行ったのがいる。一人は弁護士、一人は大学教授、大学教授のほうはもう他界したけど幼稚園からの幼馴染だった。わたしが、旧帝大に行きたいと思ったのは、学歴で苦しんだ父の影響があるのだと思う。父は小卒で学歴のないために辛い思いをしながら、連区と言われた大きな駅の駅長にまでなって、天皇陛下から勲章を授与された。わたしの高校時代は、父にいつも反抗した、ことしか記憶にない。様々な命令に逆らった。毎朝「先祖の墓にお参りしろ」、宗教の合宿にも強制参加させられたことも、わたしには我慢のできない理不尽な命令ばかりだった。いつか家を出る、心にそう誓い、耐えてきた。高校卒業のとき母に頼んで、大型トラックの免許を取った。それで家を出た。横浜で半年トラックを運転した。持ち前ののめり込む性質からたちまち6トン車を自在に運転できるまでに上達した。故郷別府を思う。大学へ行かなければ、故郷に帰る。父に頭を下げて、受験勉強を始める。優しい母、優しい祖母に助けられた。あの時ほど勉強したことはなかった。模試は番外でも気にしない。毎日朝から晩まで勉強したんだ。人々がクリスマスを楽しみ、人々がお正月を楽しむとき、わたしは三畳間でただただ勉強したんだ。旧帝大に行く、私はただそう思い続けた。必ず勝つ、わたしはもう世間の物差しで測ってもらわなくていい、わたしはわたしの物差しで受かる、必ず受かる、そう思った。マカロニウェスタンが好きだった。夕陽のガンマンの孤独に辛さを忘れた。わたしは強い人間にならなければ、どんな逆境にも負けない、這い上がる強い男にならなければ、強い心で、心が崩れるのを、世間の物差しから外れた自分の人生をいつも思った。
 父が駅長として転勤し、姉は嫁に行き、実家には、弟と祖母だけ。わたしは、父から解放されていた。わたしは思うように勉強した。九大法の定員は240人。西日本全域から地方の秀才たちが集まる。模試は何千番? 要するに番外だった。母にも見せなかった。父に見せたら何と言われるか。胸に秘めてわたしはわたしの思いがともすれば崩れ落ちるのを何度も思い直し勉強を黙々と続けた。 
 落ちたら、貨物船に乗って遠くへ行きたい、そう決意していた。
 私の故郷別府。心から憎んだ父も今はいない。優しかった母もいない。幼いときからずっと一緒だったばあちゃんもいなくなった。
 高校時代、ほのかに甘い片思いだった人、高校2年のとき、クラスの遠足で、内山渓谷に行った。帰りはみんな歩いて帰った。暗くなり私は級友と女子二人を送った。それが片思いのひとだった。いいひとだな、という思い出しかない。クラスで会っても話すこともなかった。
 わたしの故郷別府、父と母が、いてくれたら、どんなにかいいのに。
 幼いときから見上げてきた、鶴見岳。わたしが故郷を離れても、帰れば、別府湾が広がり、鶴見岳がいつもいた。
 わたしの故郷別府。今度はもう誰もいない。
 私はただ別府の地をあてもなく歩くのだろうか。
 母がガラガラとわたしのためにドッサリと買いこんだ食料を運んでいるのに出会えるかも。父が上機嫌で迎えてくれるかも。

 故郷へいつの日帰る  父も母もいるあの町へ いつの日帰る

 鶴見岳

 鶴見岳

 別府景色

 別府全景 高崎山が見える

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