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「世間と社会」 読解についての考察/都立小石川受検の選択/都立戸山の受かり方/その他お知らせ

2019.11.25

 

第34章 「世間と社会」 読解についての考察
 世間とは何か。大辞林を引く。

せけん【世間】
①人々が互いにかかわりあって生活している場。世の中。また世の中の人々。「渡る━に鬼はない」「━に対して申し訳が立たない」「━の目がうるさい」「━を騒がす」「社会に立つてる以上は矢張━を気兼ねしませんと/社会百面相魯庵」
②社会での、交際や活動の範囲。「━に顔がきく」
③〘仏〙変化してやまない迷いの世界。生きもの(有情世間)とその生活の場としての国土(器世間)などがある。→出世間
④自分の周りの空間。あたり。「俄に霧立ち、━もかいくらがりて侍りしに/大鏡道長」
⑤生活の手段。身代。財産。「彼の地頭━もおとろへ/沙石集9」
⑥人とまじわること。世間づきあい。「━する若い者呼びに来まいものでもない/浄瑠璃・心中宵庚申下」
⑦(僧に対して)俗世の人。一般の人。「南都に或る律師、━になりて/沙石集3」

社会とは何か、世間とどう違うのか。大辞林を引く。

しゃかい【社会】

①㋐生活空間を共有したり、相互に結びついたり、影響を与えあったりしている人々のまとまり。また、その人々の相互の関係。「━を形成する」「━の一員」「全体━」
㋑同種の生物の個体間の相互関係や、それらのまとまり。「ニホンザルの━」
②同じ傾向・性質、あるいは目的をもつ人々のまとまり。「上流━」「都市━」
③(自立して生活していく場としての)世の中。世間。「学校を卒業して━に出る」
④「社会科」の略。〔「同集落の住民の集まり」の意で中国の「近思録」(1176年)にある。英語societyの訳語として用いたのは福地桜痴とされ、「哲学字彙」(1881年)にも載る〕

「世間」の用例の考察
「渡る世間に鬼はない」というが、「渡る社会に鬼はない」とは、言わない。ここからは、世間の方が、人情とか、非情とか、人の心のありようを言っている、節がある。
 
「世間に対して申し訳が立たない」は、「社会に対して申し訳が立たない」でも意味は通る。ここでは、世間も社会も公の色をしている。
「世間の目がうるさい」と「社会の目がうるさい」
後者はない。ここで、世間の目は、人の目である。
「世間を騒がす」は、「社会を騒がす」とは、ニュアンスが、異なる。社会を騒がすというとき、人は背後に退いている。「世間を騒がす」とは、世間の好奇心を、つまり人の心を騒がすのであり、世間には、人の好奇心が垣間見える。
「社会に立つてる以上は矢張世間を気兼ねしませんと/社会百面相魯庵」
 この用例は、社会と世間を区別している。ここでの社会は、人を捨象して、制度、さらには組織の面を強調している。世間は、人に着目している。
 
 「世間に顔がきく」とは、言うが、「社会に顔がきく」とは、言わない。世間は、人である。
 
  次に、「社会」の用例
  「社会を形成する」とは、言うが、「世間を形成する」とは、言わない。社会とは、人の集合、組織であるが、しかし、人ではなく、組織、制度、秩序に力点が置かれている。
「社会の一員」とは、言うが、「世間の一員」とは、言わない。
「全体社会」とは、言うが、「全体世間」とは、言わない。

 「ニホンザルの社会」であり、「ニホンザルの世間」とは言わない。
 「上流社会」「都市社会」であり、「上流世間」「都市世間」はない。
 「学校を卒業して社会に出る」「学校を卒業して世間に出る」。後者はやや無理があるが、意味は取れるから、間違いではない。

こうして、社会とは、秩序の視点であり、世間とは、人の目の視点である、と言えようか。

世間とは、狭いものである。近所という世間は確かに、狭い。学校という世間も狭い。人はさまざまな狭い世間でストレスを抱えることになる。
 
社会秩序と世間体
社会は、客観的視点、世間は、主観的視点から見た概念
社会は、抽象的人間の集合体、世間は、具体的人間の集合体

 さて、社会と世間の大辞林を使った概念比較から、まず辞書の引き方を具体的に理解できたであろうか。さらに、思考というとき、「比較」の視点、前提としての二元論が、コツだということを理解していただけたであろうか。
二元概念の設定は、反対語、類義語などから選ぶ。
辞書を「考える」ことで、読解の力をつける。読解というのは、結局「考える」、国語的に「考える」ところから培われるのであるから、方法はいくらでもある。
 
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竹の会割合修行五部作 
 

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