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中学受験 高校受験 受験相談 渋谷で創立30年

塾の先生の仕事とは

2015.11.24

 おはようございます。 11月の残された日々はどこまでも穏やかで静かです。毎年のようにむかえる12月はある種の緊張と不安を漂わせ、どこかしら悲壮感につつまれた感覚とでもいいましょうか、わたしにはじっとその重みに耐える姿が似合うような気がします。子どもたちにも12月の空気はちがうということを肌で実感する日がくるでしょう。刻々と迫り来る本番の日がこしかたの自分のありようを悔いなく見返せるのか。時間というものの非情なほどに冷徹な性格を知っていたなら、たくさん時間があると錯覚して勉強を後回しにしてきたこと、蔑ろにしてきたことの愚かさを知る、それが凡人の凡人たるゆえんなのでしょうか。

 わたしの思いが通じていたからか、いやそうではない、それだけ合格したいという思いが強かった、そういう子のみが、そういう家庭のみが勉強を大切にする生活を送るのであろうかと思います。

 長年塾の先生をしていますと、何がうれしいかと、それはもちろん子どもたちが志望の学校へ合格していくことでしょう。都立中制度が始まってわたしが初めて掲示板の前に立ったのは、平成22年の両国中の発表でした。あの年はそれから桜修館に回り、無事合格を確かめることができました。この年は、東大附属にも合格者が出ました。そして都立富士高校に倍率4.8倍の推薦枠に合格した女子もでました。この富士の発表に出かけたのが富士を見た最初でした。翌年、つまり平成23年からは毎年2月9日には掲示板の前に立つようになりました。竹の会のような小塾から合格者が出るということが奇跡でした。22年は4人受けて2人合格、23年は3人受けて2人合格でした。落ちた子は落ちるべくして落ちた、と思います。しかし、24年は感触では三番手の女子が合格でした。25年は5人中の3人が合格。ただし1名は10月退塾者でした。もっとも辛かったのは26年でしたか。3人受検でした。うち2人は模試で常に上位にあった子たちでした。白鷗の補欠リストに載った子は不運でした。もっとも衝撃だったのは桜修館でした。わたしが実力を認めた子だったからです。このとき初めて掲示板の前に立つことの怖さを知りました。掲示板の番号を追うことの過酷さを知りました。竹の会という小さな塾で、受検者も毎年3人前後というところで、必ず合格者が出ていたこと自体が奇跡的なことでした。この年の3月、都立駒場高校の掲示板で番号を見つけたときはとにかく体が力が抜けていくようでした。ほっとしてとにかく黙々と帰りの道を歩んだのを覚えています。

 だから27年の掲示板は恐かった。毎年8日の夜は朝まで何度もうなされて、浅い眠りのままに心臓がドキドキするのを感じながら掲示板に向かいました。5人受けて2人合格。桜修館は2人合格を見込んでいましたが、1人だけでした。最初に探した番号が「ない」とわかったとき、不安が過ぎりました。でもすぐ目当ての番号が目に入り、何度も何度も確かめました。帰りの道すがらなかなかつながらなかったネットが運良くつながり、富士の番号を確認できました。1人の番号を見つけて胸が熱くなりました。この年は、都立戸山高校が残っていました。受験の後、点数を聞いていたので、合格を信じていました。それでも発表前日は寝付かれずに早朝戸山まで出かけました。確かに目当ての番号を見つけ、これほど救われた気持ちになったことはありませんでした。

 何がうれしいかって? もちろん掲示板に目当ての番号を見つけられた、ときです。

 しかし、実は、日々のささやかな喜びもあるのです。子どもから、「わかった」と言われるとき、そしてわたしも「わかったな」と実感したときがなによりもうれしいですね。わたしは、子どもたちが「わかった」という、それだけを支えにがんばっているところがあります。それが塾の先生の仕事なんだと思っています。

 「わからない」という子どもは、いろいろよくない症状が出る、「わからない」が、心をねじ曲げていく、ふてる、ふてくされる、しだいに素直さが消えていく、伸びていた背筋がいつしかだらりと机に体を預けてしまりがなくなる、そういう子たちをどれほど見てきたことか。子どもにとって「わからない」がもたらす悪影響ははかりしれない。「わかる」と褒められて、せっかくやる気を出して頑張っていた子が突然夢遊病者のようにやる気をなくす光景を何度となく見てきた。

 「わからない」から勉強を放り出す。やる気をなくした心情をアピールする子ら。わたしにはどうしょうもできないことなのか。塾の先生というのは、いつもこの子どもたちの「わからない」と戦っている。

 うれしいこと、それは子どもが「わかった」と目を輝かせること、「なるほど」というのもいいけれどちょっと生意気かもしれない、だけれども「わかった」という言葉が聞けたのはやはりうれしい。

 塾の先生の仕事って何? いつも「わかった」ということを確かめることかな。

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