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竹の会回顧録(平成9年)~「まじめさ」という才能~

2015.10.28

 

★都立青山高等学校・合格(女子)

※以下の文章は, 平成9年に都立青山に合格したTさんに関する当時の文章です。

 

Tさんが入会したのは, 中1の4月のことだった。

当時、Tさんに対する中1の英語指導は、週1回2時間だった。

中1はTさんの他には、1人H君がいるだけだった。最初の英語の授業のとき、1冊のテキストを与えた。

そしてテキストの10ページ位を区切りとして、その中に出てくる新出単語(30~40語)を次回の授業までに覚えてくることを約束させた。1週間後、約束通りテストをした。Tさんは全部覚えてきたが、H君は1つとして覚えてこなかった。

 

私は次の約束をした。

そして、約束の日がくると単語テストをした。Tさんは全部覚えてきたが、H君は1つとして覚えてこなかった。この約束とテストは1年の間続いた。最初30~40語くらいだった単語テストも、回が重なると既習の単語をまとめてテストしたものだ。

 

Tさんは私との約束をずっと守り続けた。

H君は数か月過ぎても、最初の単語すらほとんど書けなかった。このとき、私はTさんに与えた英語のテキストを、もっぱら単語テストのためだけに用いたのである。そのテキストの問題を解くことはあえてしなかった。

Tさんは1年生の間、その単語テストで88点が1回あっただけで、常に90点以上をとった。2年生になってから、かなり細かい指導をした。相当のノルマであったにもかかわらず、Tさんはついてきた。そしていつも学校の英語では95点以上をとり続けた。3年生になって100点もとった。

彼女は、英語の勉強というものが、特別の勉強をする必要があるものではなく、きちんきちんと平凡なことを積み重ねることが大事であると実証した。努力さえ怠らなければいいということを、目に見える形で示した。

H君はいつしか、竹の会から姿を消した。塾は、努力しなくても成績の上がる魔法の力を用意しているわけではない。

 

よく英語などで評判をとる塾というのがあるが、英語塾の成功の可否は、一定量の宿題を強制的にやらせることができるか否かにかかっており、この点を、つまり強制の要素を制度化できれば英語塾というのはうまくいく。強制の雰囲気が生徒に行きわたり、怠ける者は止めるしかない、という雰囲気ができあがると、怠けない以上、成績も上がるわけであり、止めさせられたくないから一生懸命やるという循環ができあがる。こうなると宿題さえ出しておけば、放っておいてもどんどん成績が上がる。強制の要素が主体的に取り込まれたとき、英語塾は成功するのである。

英語は本人の努力にかかっており、能力よりも「まじめさ」という資質にかかる。

英語塾などに通わなくても90点をとる生徒がいるのは、そのためである。英語に必要とされる「まじめさ」とは、几帳面さと責任感である。

英語は必ずしも、能力的なものを必要としない。

しかし、初期の段階で躓くと、こと英語に関しては、後に克服するというのはかなり絶望的といえる。中1のスタート時点での英語の取り組み方が、その後の英語を決定的に左右する。この時期にサボるともはや取り返しがつかない。なまぬるい生活をだらだら送ると、それだけでその後の3年間はもはや結果が出たようなものである。語学は怠け者にはきつい科目である。

きちんと言われたことを実行する。平凡なことであるが、難しいのである。

 

Tさんは、都立青山高等学校へ進学した。

「まじめさ」をもった、誇るべき塾生のひとりである。

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