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慶應女子の数学とその対策法

2023.04.11

慶應女子の数学とその対策法
 竹の会の高校受験上級レジュメ・シリーズには、慶應女子の過去問を取り上げたものが、多い。これは、首都圏の偏差値70以上の高校の数学の過去問から、問題を選択していくと、どうしてもそうなってしまうからである。
 難関私立高校を受験する場合、竹の会では、上級レジュメ・シリーズは回避できない。これが都立日比谷クラスなら、いわゆる竹の会の定番レジュメ「入試過去問撰(入試数学ベーシック)」だけでいいのだが。ちなみにこの「入試数学ベーシック」は、偏差値70未満までの対応を想定している。例えば、青山学院高等部ならこれで足りる。平成10年に早稲田実業高校に合格させたのもこの「入試数学ベーシック」であった。もっともその当時の「入試数学ベーシック」は、全100問のテキスト版であったが、現在は、「入試過去問撰」という全70問のレジュメ集になっているが。

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   さて、慶應女子の数学の話しである。一度挑戦してみればわかることだが、その難易度は、制限時間との兼ね合いを考えると、高校受験数学の極限にまで達している、と断ぜざるを得ない。

 わたしの、というか竹の会のレジュメ解説版は、詳細な解法の手順を全くのオリジナルの簡潔・明解を旨とした解説集として、その難解な数学を解き明かしたものである。
 ところで数学の才能のある者には、竹の会のレジュメ問題及び解説レジュメは特効薬のように効果を発揮してきたが、数学を苦手とする者は、問題を自力で解けることが、少なく、解説レジュメを読んで理解する、ということが多い。
 このような生徒でも、慶應女子に合格できるのか、という話しである。
 まず、前提として、英語、国語は合格水準に達する見込みあり、とされている、として話しを進める。
数学の才能がない場合、慶應女子の数学で高得点を取ることは期待できない。合格最低点を取ればいい、というくらいの気持ちである。
 通常偏差値70前後の私立高校だと、60%が目安かと思っております。ただし、早稲田実業高校は70%中大附属も70%は取らなければ合格できない、との認識です。これは問題の難易度との兼ね合いです。中大の場合、平易な問題が多いのです。早実もさほど難問という認識はありません。
 慶應女子の問題の難易度を考えると、やはり60%ぐらいと見るのが妥当なのかな、と思います。3科目180点を一応の目安とします。
 わたしは開成・筑駒の指導において、過去問は、70%を目安にしていました。
 慶應女子は70%ラインが安心ラインなのかな、と思います。数学が苦手でも50点取れたら、勝負できるのかな、と思います。
 慶應女子合格者の入学辞退者は、40%以上はいる、ようです。おそらくお茶の水などの国立に合格したとか、都立日比谷を選んで東大をめざすという生徒が相当数慶應女子を受けているということなのでしょう。
 早実は、入学者は、公表していないので正確な情報ではありませんが、慶應女子より多い辞退者がいる、のではないか、と思います。おそらく慶應と早稲田実業に受かった場合、慶應を取るのではないか。また開成、筑駒その他の国立志望者が受けることも考えられ、さらに日比谷に流れることも多いのではないか。一説には、入学辞退者は70%というのもあります。
 さて、数学では、6割が最低条件とみていいようです。英語、国語で70%は取りたいですね。数学が得意な生徒でも何が起きるか、わからないのが入試です。

 鉄緑会の創始者の一人である和田秀樹には、「数学は暗記だ」というベストセラーがある。この本には、批判が強かった。特に、和田が、灘高から東大理Ⅲに現役合格の経歴であることから、頭がもともといい人の「数学ができない」とは、そのまま普通の高校生には、当たらない、という批判があった。これに対して、和田は、この批判に反論する形で、2007年「数学は暗記だ」の内容を一新して、新たに発刊している。
 前著と違い、青チャートを引用して、その具体的方法を説明している。前著では、寺田の鉄則と青チャートを薦めていた。もちろん東大受験を意識したものである。
 新作では、脳の情報処理のプロセスの研究の進展から、人間の思考とは、既存の知識を使って推論すること、である、と定義されるようになったこと、から、数学の解法を暗記して、推論する、というのは、そのままこの定義にあたる、とする。さらに、彼は灘高から東大理Ⅲ現役合格であるから、もともと頭がいい、という批判に、反論して、灘高は一般の高校と使っている教材は変わらないし、その教科書を自分は全く理解できなかったのだと。
 和田によると、当時灘高には、模範解答売り屋がいて、そいつらはできる生徒からノートを写させてもらい、それを編集コピーして売ったのだという。和田は数学が全くわからないので、これを買った。そして丸暗記したら、定期試験で上位が取れた。そこでそれからはその解答屋から解答を買い、それを暗記したのだ、という。それでは模試では点が取れないだろう、と思う人といるかもしれないが、そんなことはなかった、ともいう。
 そこで、和田は、数学は解法の暗記だ、と気づいたのだ、という。
 実は、わたしも似たような経験がある。高校時代、わたしも数学は苦手だった。高校3年生のとき、ギリギリ国立クラスに残れたのだが、定期テストで、数学が赤点ならクラスを落とされる、ことになった。数学の授業では、数学のプリントが配られる。数学の先生は、この中から出すと言った。それでわたしは、8枚ほどあったプリントに丁寧に解答を書き込み、何回もこれでもかというほど読み込んだ。いや暗記したのだ。そして定期試験では、数学80点以上の得点を取った。数学の先生が目を丸くさせていた。先生を驚かせたのは、高校3年のときの全県模試で国語が全県3位を取ったときだった。答案返却のとき、担任が二度見して「信じられない」という顔をしていた。国語はもともとなぜかよくできたのだ。
 和田は、疑問を投げかける。解けるまで考える(自力型)のは、本当にいい方法なのか。自力で解がなければ力がつかないのか。
 そして、和田は、これを否定する。それでは、できない者には、時間がかかり過ぎて間に合わない、というのだ。
 そこから最初から解法暗記の方法を提案する。
 才能のある生徒は、問題を解かせても延々と時間がかかるということはない。ところが、才能のない生徒は、そうはいかない。いくら時間を、かけても「わからない」と持ってくる。
 わたしは、実は、昭和62年に青山学院高等部に進学した男子生徒が、東大をめざすといい、和田の「数学は暗記だ」を、信じて、寺田の鉄則(全5冊)の暗記に挑んだことを知っている。しかし、彼はうまくいかなかった。そのまま青山学院大学に進むことを嫌い、建築学科のある私大に進学した、と聞いている。
 竹の会でわたしが、数学を指導するとき、よく使っていたのは、「細田の数学」とか、名前は忘れたが、1冊で数学IIBまでのっているかなり厚い参考書だった。これで慶應大、上智大は、取れた。また「細田」で、慶應理工、早稲田理工も取れた。気に入って使ったのは、「大学への数学」別冊「演習」だった。チャート式は、使ったことはないが、新宿高校など多くの高校で採用している。また、数研出版のステップ問題集は、愛用した。
 この時代、生徒を指導するのに、数学は暗記だ、という意識は全くなかったが、竹の会伝統の「7回解き直し」は必ずやらせたから、後から考えれば、これが、「数学は暗記だ」を実践していたことになるのかもしれない。
 さて、わたしは、7回解き直し、の意味を、数学は暗記だ、の主旨にしたがって、再構成してみる、ことにした。現在、竹の会の中学生には、それほど数学の才能があると思われる生徒はいない、と認識している。しかし、それでも私立難関を受けようとする生徒がいれば、そのための指導を工夫するしかないからである。
 そこで、竹の会伝統の7回解き直しの再構成をせざるを得ない。
 和田の「数学は暗記だ」の言わんとするところ、そしてわたしの高校時代の数学を乗り切った経験を踏まえて、考えてみたい。
 暗記とは、何を覚えるかだ。まず、ここのところを「決めて」覚えることが、大切である。闇雲に読んで闇雲に解き直すということではない。闇雲流は、答えだけを覚えるの愚を犯すことになる。
 端的に、「意味」、「理由」と言ってもいい。「なぜそうなるのか」「なぜ変形するのか」、つまり「なぜ」を覚えると言ってもいい。
7回解き直しは、問題を読んで、問題の意味を読み取り、問題を解く過程、思考過程を再現するものと言えよう。数学の場合、問題から意味するところを読み取り、何を使うのか、を選択する。これは高校入試特有なのかもしれない。高校数学とは、違う。高校受験数学の場合、与えられた条件から、使える道具は絞られてくる。誤った道具だと使えないから、試行錯誤を繰り返すので、これは「使えない」とわかる。使える道具は何か、である。この問題の表現から何が使えるか、を考える。例えば、等積変形とか、2点間の距離の公式とか、高校受験数学には、選択肢はそれほどない。三平方の定理が、使えないから、どうするか、使える状況にない、ときに、何が使えるか、考えるのだ。こうして、覚えることは、問題の表現と使える道具のセットである。高校受験数学の暗記は特殊と言っていい。
 暗記とは、理解型暗記のことである。問題と答えを暗記するのではない。
 高校受験数学の暗記、いや7回解き直しとは、問題の核となる表現、つまり、条件の内容から、これを解くのに、適切な「道具」は何か、を発見することである。
 ノートにまとめる場合、条件を箇条書きにして、与えられた条件を総合して、使える道具を発見することである。
 道具には、何があるのか❓
 1次関数の式を一瞬にして、見つける道具、これは、傾きmを変化の割合の定義により2つの座標から出せる。式の形は、y-a=m(x-b)である。座標(a,b)を通ることを前提としている。変化の割合は、2つの座標から出すのはもちろんである。
 使える道具を一覧にして、つまり、公式集を使って、問題の表現を公式ごとに貼り付けていく、方法など、方法を工夫してほしい。
 竹の会では、さまざまな戦略を練ることを得意としているが、オリジナルの公式集については、都立には必要ないが、私立難関対策として、竹の会考案のものを、早速執筆する、と思う。それは、問題表現と使える可能性のある道具リスト、道具の取扱説明書の2編に分けられる、であろう。
 このブログを書いているうちに、戦略が見えてきた、というか、よくあることです。
 わたしは、「草枕」は、ほとんど往復の電車の中で書いていますから、書いてるときに、いろいろ閃くことはあります。

 

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