2023.05.01
本日会員ページを更新しました!!
⭕️国語読解の闇~その正体を暴く
~評論文と小説文
~二項対立読解法 ~石原千秋式
石原千秋式読解がこれまでの指南書と違うのは、石原式が、本文の内容そのものを問題としたことである。これまでも出口、田村といった予備校の人気講師の解説本を始め、その他いいと言われる参考書は出ていた。田村の現代文シリーズはわたしもよく指導に利用した。内容の読解法を入試問題に即して解説していくスタイルである。国語読解を形式面からアプローチしようという参考書ならそれこそ諸子百家がいた。例えば、福嶋式とか、選択肢問題の解き方本とか。しかし、本文そのものを実質面から分解して読解したのは、石原千秋を嚆矢とする。
※こうし【嚆矢】
昔、中国で合戦の初めに、かぶら矢を敵陣に向けて射かけたことから〕物事のはじめ。最初。
石原の方法は、評論が二項対立を本質とすることを前提として、本文のワードを二項対立化、すなわち二項図式化していくことである。これは、結局、本文の要約という作業に帰するから、読解とは、要約である、という現在の読解の通説とも一致する。要約というキィーワードは、小説の読解でも共通である。小説の場合は、一文で物語に要約するのだ、ということを石原千秋は説いている。
竹の会では、四字熟語の由来文を読ませてそれを200字に要約させるレジュメシリーズや、読解文を要約させるレジュメシリーズを平成25年あたりから指導としてやっていたと思うが、それに真面目に取り組んできた子の国語力が抜きん出ていいことがわかってきた。読解とは、要約力だというのは、東大理Ⅲ合格者の合格体験記なんかにも出てくる。それによると、「ちくま読解入門」で要約の練習をしたとある。この参考書は、解説が詳しく要約オンリーのスタイルで書かれている。要約をマスターするには最適の教材である。筑摩からは優れた読解用の参考書が他にもたくさん出ている。
国語力とは、要約力であり、評論文を的確に要約できることが、すなわち読解力ということになる。この要約法に関しては、また諸論あり、二項対立を意識しない参考書がむしろ普通である。しかし、翻って考えてみると、石原式は、評論の本質が二項対立にあると読解の手がかりを明示し、本文を二項対立で図式化して、色分けする。その結果、文書の要点がまるでスケルトンのように一目瞭然となる、という意味で、推奨に値するのではないか。
そういう判断もあって、わたしは指導に資するところありと考えて、「秘伝 大学受験の国語力」を精読している。実は、石原には、似たような多数の本があり、それは教室の書架にすべて揃っていた。竹の会の書架には、まだ未発掘の優れた書籍が埋もれていると思われる。改めて読み返すことが今のわたしのタスクにもなっている。
さて、二項対立に注目して本文を図式化して、もって本文を要約するという石原式読解法の効能や如何。
石原の二項対立整理の例
〈十八世紀以前/十八世紀以後〉〈干渉/独立〉〈かつての共同体音楽/純粋な音の構築物としての音楽〉〈目的的/没目的的〉〈外部・他者/純粋〉〈公開性/遮断〉〈他律/自律〉〈外的な制約/自律性の原理〉〈限定・その場限り・一回性/普遍〉〈現実的な特殊性/想像的な普遍性〉〈ある人間/人間一般〉
以上である。
どうでしょうか。読解には、語彙力が前提になるということも理解できたのではないでしょうか。普段から、漢検や読書、新聞などを通して語彙を広げることの重要性を認識できましたか。
豊富な語彙の力を借りて、文章を読み解き.、二項対立に分類していく、これがすなわち要約、すなわち読解の正体である。私たちは、国語辞典を片手に文章を二項対立による図式化訓練をしていけばいいのである。二項対立の亜型である三項対立、二層構造ならぬ三層構造にも動揺しないで黙々と図式化していく読解法を身につけてほしいと願うばかりである。