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知識が乱れる、混乱する、瓦解する害悪について

2022.05.31

 

◎知識が乱れる、混乱する、瓦解する害悪について

 体系的に学んだ、わかりやすく言えば、本を読む方法で勉強した人が、やってはならないこと、決してやってはならないことがある。他の本に手を出すことだ。特に、完全整理したなどと謳う本はまずい。整理というのは、必然表を多用する。表にしなくていいものまで無理に表にする。こういうものを見るとそれまでの自分の「読む」ことで形成されてきた体系が、あっという間に崩れる。つまり、読むなら1冊を7回読むというのは、この読む思考で形成される脳の安定を形成していくことにほかならないから、そこから離れるということは、それまで形成してきた知識の体系を一気に崩すことになる。これは試験直前に人の使っている参考書を見て変えるということが愚行であるということを示すものである。突然「変える」などというのは害悪しかない。昨今は、参考書もよくできていて、カラーはあたりまえ、やたらわかりやすい表が使われる。しかし、この表というのは、実はなかなかのくせ者である。人がいきなり、表を見ると、それまでの知識体系は必ず壊れる。他人のまとめたものをみるとたちまち不安に襲われる。自分の培ってきた軸が一気に崩れ去る。だからどんなにいいものと言われても見ないことである。自分の1冊だけをひたすら繰り返し読むことである。そもそも表を暗記するというのは、浮動性の知識しかつかない。ただの暗記には論理がない。というか基本が知識偏重型、暗記型の人間にある。
 読むという行為は、理解型の人間のする、必然的に取られる行為である。読むことで形成されるエートスは、知識に安定をもたらすと考えられる。これはデカルト(1596~1650)が「方法序説」で奇しくもに警告していたことである。そこには、いったん一つの方法を取ったなら決して変えてはならない。たとえ後からもっといい方法が見つかったとしても決して変えてはならない、と述べられている。1冊に決めたら変えてはならない。それとは別に、暗記物を図や表でまとめたものには、手を出さない方がいい。卑近な例を挙げよう。例えば、山川の日本史を読んでいたとする。このとき、予備校に素晴らしいと評判の参考書を勧められる。しかし、その参考書がいくら優れていても、決して手を出してはならない。これこそが勉強の鉄則であり、不文律である。まず、1冊に絞れ、そしてそれを7回読む、読むことの経験を積め、読むときには、文意をとる、文脈を追う、ことに全神経を集中させよ。

 わたしは、あなたたちに読む人になってほしい。

 

 

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