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わかりやすさ、という毒

2022.05.04

本日の新草枕

国語の解き方第4回講義/頑固な子は受からない/「わかりません」と丸投げする子/わかりやすさ、という毒

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◎新草枕から一部紹介

わかりやすさ、という毒

 難しいところを削除する。大手、中手の塾が、やっている手である。難しいところを抜いたテキスト、平均80点取れるように調整したテスト、親も子も喜ぶテスト、だから塾も儲かる、塾の実態とはそんなもんです。だから力なんか何もついてない。昔から、竹の会を訪れた親に「今の塾ではどうなのですか」と聞けば、「成績は悪くはない」と決まって答えたものです。しかし、わたしは、内心わらっていましたね。実力なんて空っぽだと知っていたからです。親子で騙されて世話はない。
 塾が看板にする、「わかりやすさ」というのは、毒なんです。頭を悪くする毒、しかも効き目が良すぎる毒です。
 教え方がうまい、下手というのも、この「わかりすさ」の調合次第というところがある。教え方が下手だ、と親や子がぼやくとき、自分が頭が悪いだけじゃないの、ということもある。
 確かに、講師の質はあるけれど。かつて都立駒場高校の生徒を講師として雇っていた塾が近くにあったけど、呆れて言葉もなかった。
 大手の講師は、ほとんど学生アルバイトだと思う。さすがに、大手進学塾には専門の講師もいるとは思うが、案外東大生なんか雇っているところもかなりありそうだ。鉄緑会は、東大、しかも医学部の学生で固められている、らしい。
 わたしの知る限り、早慶、マーチあたりの学生が多いように思う。慶應も理工学部の学生になるとかなり優秀だが、とにかく玉石混交といったところか。
 親は、わかりやすさを求めるが、わかりやすいというのは、実は、自分の子の頭がそれほどでもないか、塾の教材、講師のレベルが低いかのどちらかということの方がほとんどだろう。

 大学の刑法の講義で、井上教授が、「刑法はわかりやくなんか講義できない」と学生に向かって壇上から話していたのを覚えている。わかりやすさを求めているのは、頭の中が具体的なものしか受け入れられないからである。学力というのは、如何にして頭の中を抽象化していくか、ということである。だから塾は、この抽象化ということを如何にして子どもたちに学ばせていくか、訓練していくか、ということに力を注がなければならない。

 わかりやすさを売りにする塾は、具体的な問題の解き方をわかりやすく説明すると言っているのだろうが、そんなことをやっていたら子どもの頭の中には、わかりやすいものしか受け付けないという毒がそれこそ全身に回ってしまうだろう。

 学問を学力を誤解した愚かな親子に何も言うべき言葉はない。

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