2022.12.29
都立中高一貫校制度は成功したのか?
都立中高一貫校は学力検査をしてはならない、のはなぜか?
なぜ適性検査なのか?
適性検査は、学力試験とは違うのか?
始まりは、平成9年の文科省の中央教育審議会であった。そこで公立中高一貫校の導入が審議された。そこでは、受験競争の低年齢化の回避、したがって公立学校では学力試験を行わないことが議論された。受験準備に偏した教育の回避するのが趣旨だから、と学力検査はしない、という主旨です。その後、学校教育法の改正で、公立中高一貫校の設置が定められた。衆議院文教委員会の附帯決議では、入学者の選抜において学力試験を課さないということが、決議されている。その主旨は、受験エリート校化、偏差値による学校間格差の助長、受験競争の低年齢化の回避にある。
適性検査というまやかし
さて、適性検査から15年たった今はどうか。
当初の適性検査らしきこだわりは、雲散霧消して、実質的に、私立中学学力試験と変わらない内容に変化している。適性検査という名称の学力試験にほかならない。私立中学の入試となんら変わるところはない試験ということである。
特に、最近の適性検査問題は、難関私立中学とほとんど同じ構成の問題と言ってもおかしくない。 開成、麻布、早稲田などの有名私立は、もともと思考力や判断力を問うことで受験生の優劣の差をつけようとする問題を出してきたのである。そうした学校を目指している児童なら、何もせずとも現在の都立中高一貫校の問題が解けてしまうはずである、
東京都教育委員会の意図と異なり、都立中高一貫校は、受験競争の低年齢化に拍車をかけていることは、間違いない。制度の狙いは、立法者の意図とは真逆な結果になるのは、世の常である。
開成、麻布、早稲田、慶應などの有名私立の滑り止め化した都立中高一貫校の実像
それは、合格した生徒の入学辞退率の右肩上がりの増加に顕著である。都立中高一貫校のエリート校化も明瞭である。もともと凋落した都立高校の復権が目的であった。都立中高一貫校に選ばれたのは、いわゆる進学重点校よりも下位のクラスで、かつては進学校とされた都立であった。進学重点校と並んで都立の復権を図った施策であった。
ところで、進学指導重点校制度は、予算の優先配分、教員の公募、教科の補習と講習に力を入れるという謳い文句でスタートした。要は、進学対策に力を入れさせて、難関国立大学への合格実績を向上させる、そういうことである。東京都教育委員会は、かつての愚策「学区制」「学校群制度」で、都立の黄金時代を自ら潰して、優秀な児童、生徒を大量に私立に流れさせ、バカだらけになった公立中学、都立高校の凋落を実現させた。この優秀な児童が私立にほとんど抜けてしまうという流れは、今も変わらずそのままである。今更感がある。何を言っているのか、バカな教育委員会の悪あがきではある。私立の経営者は必死である。少子化の今、都のやりたい放題に手を拱いていたわけではない。
都立中高一貫校の当初の狙いは変化したことは、先述の通りである。今の都立中高一貫校は、学力検査化して、私立入試の学力試験となんら変わるところがない。小3ないし小4から大手進学教室で学習蓄積量を積み上げてきた私立受験生に、小6前後からそろそろ準備などという呑気なことを言っている都立中高一貫校狙いの子が勝てる要素は才能を除けば何もない。都立中高一貫校を望む親は、もともと受験とは無縁の層であった。都立中高一貫校の最大の魅力である、学費は「ただ」に魅せられたのが動機であるのは間違いない。だから最初から私立受験絶対の親とは根本のところの覚悟が違うのだ。私立受験の親は最初からカネをかける覚悟で勝負している。これに対して都立中高一貫校オンリーの親はできるだけカネは使わないで、というのが根本にある。特に、女子にはカネを使わない親が多い。
実態として学力検査と化している公立中高一貫校の入学選抜に打ち勝つには、どうすればいいのか、自明である。私立組に負けない、8倍の競争を勝ち抜く、それには、私立受験生よりも早くに準備を始めて、諸事万端を期すほかないのである。
中堅以下の私立の苦難
私立は、上位何名までで実績を出せばいい、というのが、真実の意図である。
私立の下位層の扱いは、公立も、私学も大差ない。彼らは成績は多少上がっても、有名大学に入れるほど伸びてくることは稀なので、放置されることも少なくない。いや放置されるのだ。私立には、必ず落ちこぼれがいるが、これは私立の想定の範囲内である。放置しても経営的には必要なのが落ちこぼれだ。
難関有名私学の放置
難関私学でも、下位層で入学したときの悲劇は変わらない。これを下位層問題とでも呼べば、こうした落ちこぼれ軍団は必要悪として存在する。
東大合格者を二桁以上出している私立国立中高(筑駒、開成)」は、入ってくる生徒の大半がもともと極めて優秀なので、何もしなくても勝手によい大学に受かってくれる。だから組織的な進学のための講習もほとんどなく、進学指導や生徒指導もない。そうした学校に下位層入学してしまうと、6年間放置されたまま、三流大学、Fラン大学へ進学することになる。
親が子どもの実力以上のところを高望みしてもろくなことはない、ということだ。
○公立中学はバカの複合体
教育環境の悪辣化
勉強嫌いな子、日本語のできない外国籍の子、じっと机に座っていられない子、勉強ができると否とに関わらず、品性下劣な子、下品な言葉を撒き散らす子、こういうバカ集合体では、学習進度を速めたり、高校の内容を教えることなど不可能だ。
※「通常学級に通う公立小中学校の児童生徒の8・8%に発達障害の可能性があることが13日、文部科学省の調査で明らかになった。」2022.12.13報道
私立大学合格者数の数字マジック
国立大学は原則1つしか合格できない。しかし、私立大学は複数合格があたりまえである。例えば、東大に受かった一人の生徒が、早稲田の法、政経、慶應の法、経済などに複数合格することは普通にある。だから、早慶合格数については、その実数は闇の中である。
国立大学合格者が、私立も併行して複数受験し、その大半が早慶上智、GMARCH(学習院明治青山学院立教中央法政)レベルの大学に合格していることである。
○白鷗の分析 1期生
20%が浪人。この中で現役でGMARCH以上に合格した者はいない。
5% は、短大、専門学校。
合格の70%強の半分は、日東駒専以下(日本・東洋・駒沢・専修)。
こうして1期生の半数以上は、GMARCH以上には合格できなかった、ことがわかる。
○今後も都立中高一貫校の進学実績が伸びない理由
上位層の受検生が、小石川に一極集中すれば、他の都立中高一貫校の実績は止まるだろう。
進学実績の低下は否めない。
○都立中高一貫校の上位層が薄くなる傾向について
都立中高一貫校には、東大5名などと出すところも確かにある。しかし、東大以外の合格者はと見てみると、パラパラといるかいないかで、何か冴えない。早慶の合格者にしても、少数の国立合格者が、複数出しているに過ぎない可能性が強い。卒業生の20%は浪人がいると見ていい、そして5%は専門学校、短大と見て、残りの70%強のうち、1期生では、半数以上は、日東駒専以下というのは、大半の都立中高一貫校の実態なのではないか、と思われる。
そこで、2022年の合格データから分析してみる。白鷗を取り上げて見る。卒業生数226人。 東大3 ・東北大1 ・筑波大5 ・埼玉大4 ・千葉大8 ・お茶の水2・ 東京外5 ・海洋大1 ・東工大4 ・一橋2・ 都立大4 以上、国立大は計39人です。早稲田19 ・慶應12 ・上智10・ 理科大26・ 明治34・ 青山32・ 立教41 ・中央22・法政62 ・学習院17…… 。いわゆる早慶上智GMARCH理 です。これらは、国立の合格者39人がそれこそあちこち滑り止めとして受けた結果の可能性が濃厚です。
それでは、日東駒専はどうか。日大56 ・東洋79 ・駒沢12 ・専修34 です。その他のFラン合格者は、153人にも及びます。
Fランと日東駒専を足すと334人です。卒業生は226人ですから、私立を複数受けた人がいるのは前提です。
白鷗は実はほとんどが、日東駒専以下に進学しているということです。いいのは上位30位までです。白鷗の薄い上位だけ見て、判断しないでください。あなたたちが、上位になる可能性は限りなく低い、いやほとんどないのです。努力したらなどと考えないほうがいい。都立中高一貫校の上位はもともと才能に恵まれた、優秀な子だったからです。決して、都立中高一貫校に行ったから受かったというわけではない。あなたたちは、自分の都合のいいように、つまり都立中高一貫校に入れば、東大にだって行けると勝手に妄想しただけなんですから。
これと3年型都立かつ進学指導特別推進校の都立新宿と比べて見ましょう。
卒業生316人。 東大3 ・京都1 ・北大6・ 東北3 ・筑波4・ 埼玉8 ・千葉9 ・お茶の水3 ・外語4 ・海洋2・ 東工大2 ・農工大4 ・一橋8 ・都立8 ・横浜国立7 ・横浜市立1 以上国公立計75 人。早稲田74 ・慶應31 ・上智22・ 理科大54・ 明治122 ・青学49 ・立教83 ・中央92 ・法政107 。学習20 です。日東駒専は省略します。
さて、どうでしょうか。これでも都立中高一貫校が、いいと思いますか。
わたしは、高校入試が専門ですから、その専門家の視点から見た場合、なぜに、昨今の親たちは、都立中高一貫校に血眼になっているのか、さっぱりわからないのです。確かに、都立中高一貫校は、薄い上位層には、素晴らしい成果を出してきました。しかし、制度がスタートしてもう15年経ちました。その成果は出尽くしたと思います。親御さんたちが、都立中高一貫校にとなびくのは、やはり高校入試がないこと、そしてもちろん月謝がただ(0円)なこと、に魅力を感じるからでしょう。しかし、6年間、つまり高校入試がないというのは、ある意味、中弛みからくる、怠けた、落ちこぼれを大量に生産するには、十分なのです。そして憧れの都立中高一貫校に入っても、そのほとんどが日東駒専以下に進学するということです。
わたしは、高校入試という、緊張感ある試練を通して、3年型都立、進学指導重点校、進学指導特別推進校に入ったほうが、余程いいところに行けるのに、とよく思います。
子どもは高校入試という試練を通して、中弛みなく、鍛えて、3年型都立で、飛躍した方がいいに決まっています。
都立中高一貫校は、余程の才能がない限り、6年間という長丁場が、必ずマイナスをもたらします。6年間緊張感を維持し、勉強に邁進するのは、ごく限られた才能ある人のみなのです。大半の凡人、つまり最も人間らしい人間は、中弛み、それをきっかけとした落ちこぼれというその他多勢の中に埋没していくだけなのです。
3年型都立こそ、中学の3年間を緊張感を持って勉強に没頭できる最高の機会なのです。確かに、区立中は、バカな教師が曖昧な、超主観的な裁量で、内申を操作し、子どもたちを手なづけるでしょう。数学70点でも5、90点取っても3という例なら何度も見てきました。しかし、そんなの糞食らえです。わたしは、実力をつけて実力で合格を勝ち取れ、と叱咤してきました。さらに、区立中は、悪魔の誘惑に満ちています。部活は、暗に内申と紐づけて、半強制です。しかし、そんなの糞食らえです。あなたたちは、あなたたちの未来の人生を自ら勝ち取るために、つまり高校入試で成功するために、この道を歩んでいるのです。迷わず勉強に専念してください。部活は無視してください。そんなものはあなたの未来を貶める、悪魔の誘惑に過ぎないのです。あなたたちが、高校入試という道を選択したのなら、あなたたちは、これからあなたたちの前に立ちはだかる甘い誘惑、悪魔の囁きに耳を貸してはなりません。迷うことなく、ブレることなく、『我が道』を行くことです。あなたの未来はあなたの強い意志で切り拓いていくしかないのです。
あなたたちは、都立中高一貫校の受検を通して、知ったはずです。受検するということの意味を。それは早くから、油断なく、準備を進めてこなければならなかったことを。なに、落ち込むことなんてない。あなたたちには、高校入試という選択があるのです。もう2度と同じ過ちを犯さないことです。小学生での失敗を繰り返さないことです。早くから準備を始めること、勉強第一の生活を送ること、これだけです。もう二度と勉強を遮る諸事(部活、スマホ、ゲームなどの娯楽、旅行など)に時間を費やしてはなりません。要は、世間一般の人並みの幸せなど楽しんではだめなだけです。一途に勉強のことばかり、心配する、気にかける、それだけです。
中学3年間は、短い。入学した年を越せば、もう中2です。そして次の年には、もう受験の年です。
3年型都立は、宝物なのに、あなたたちは目もくれない。不可思議なことです。