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小石川の作文、なぜ問いに答えないのか

2016.01.23

 40年ぶりの大寒波到来とは・・、この時期に、またこのような、これまでが余りにも恵まれすぎた天候であったとは思ったけれど、相変わらず天の配剤はかくてこうなるということか・・。

 昨日は、教室で水曜日に書かれた作文の添削をしてきた。まともな作文が「ない」のに正直愕然とした。ほとんどが、その問いに答えていない、問いを読んでいないのだろうか、と訝る。 本文の読み取りも不正確な子が多いけれど、それにしても、問いの指示をこれだけ無視すると・・

 「400字以内で」とあるのに、500字書いたり、「本文に出た例、・・・・を使わないで」とあるのに、平気で使う。「本文をふまえて」とあるに、本文には触れないで、「本文を踏まえると・・・だ」などと書く。「あなたの体験をふまえて」とあれば、「わたしの体験をふまえると・・・だ」などと書く。体験がどのような内容であなたがどのように感じたかなど一切ない。一言書けよ、と突っ込みたくなる。

【問題】この文章を読んで、あなたは人とのかかわりの中でどのようなことが大切だと考えますか。文章から、「詩帆」と「おじいちゃん」のかかわりをふまえ、これまでの体験を交えて百八十字以上二百字以内で書きなさい。

 まず、「どのような」という表現は内容を具体的に書きなさい、ということである。「わたしは人とのかかわりに中で・・・・・のようなことが大切と考えます。」 まず、最低限こうは書く。「「詩帆」と「おじいちゃん」のかかわりをふまえ」とあるから、その具体的なかかわりを本文から読み取り、簡潔に言いかえて、書き添える、それが踏まえるということである。「これまでの体験を交えて」書く。自分の人とのかかわりの体験である。具体的体験である。だれとのかかわりの中でどのような体験をしたかを具体的に書くのである。以上が問いである。問いに答えるとは、問題に指示されたことを注意深く、特に、具体性に気を配りながら書くということである。

 【問題1】 筆者は、日本の着物がヨーロッパに運ばれ、どのように変化したと述べていますか。五十五字以上七十字以内で書きなさい。

  「どのように」とは、具体的な変化の過程が問われているのです。「述べていますか」ですから、筆者が述べていることを書き抜くのです。

 【問題1】「私」(筆者)が、キャスターとしてニュースの内容をわかりやすく視聴者に伝えるために実際にやっていたことは何ですか。百五十字以内で説明しなさい。

 問いは、「実際にやっていたことは何ですか」です。実際にやっていたことが何か書くのです。一つとは限りません。

 【問題2】 資料1は六年生のある児童が、学級活動の時に「よりよい町づくり」というテーマで、自分のアイデアをクラスのみんなに発表するために用意した原稿です。【問題1】であなたが説明したことに基づいて、あなたがより伝わりやすいと考える原稿に、解答用紙の文章に続けて、四百二十字以内で書き直しなさい。

 これは勘違いした人が複数いました。原稿を書き直すことが問いです。問題1で書いた「何」を実際の原稿を書き直すことによって、実践させているのです。

【問題2】 わたしたちは、ふだん歩くときに歩き方を意識しませんが、入場行進のときなど、まわりの人と足をそろえて歩こうとしたり、見ている人の視線を意識したりすると、急に歩き方がぎこちなくなるようなことがあります。あなたは、このことから、無意識の行動について考え、今後、脳の働きについてどのように考えて生活していったらよいか、筆者の考えをもとにしながら、四百字以内で説明しなさい。なお、字数には 、や 。もふくめ、段落を変えたときの残りのます目もすべて字数として数えます。

 「あなたは、このことから、無意識の行動について考え」とありますから、「このこと」を分析して、無意識の行動についてのあなたの考えを書きます。このとき、もちろん「筆者の考えをもとにしながら」でかまいません。「今後、脳の働きについてどのように考えて生活していったらよいか」が、問いです。ただし、「説明しなさい」ですから、あなたの考えを書くのではありません。「どのように考えて」とは、具体的に書きなさいということです。抽象的にまとめてはいけない、と言っています。

【問題1】 問題文に書かれた待庵に用いられている「遠近法」について、問題文の語句を用いて分かりやすく説明したのちに、その効果をまとめ、さらに、その効果に対してあなたが気づいたことを書きなさい。字数は二百四十字以内とし、段落を二つ設けてまとめなさい。字数には 、や 。などもふくめ、段落をかえたときの残りのます目もすべて字数として数えます。

 なんとも問いの多い問題です。

 ①待庵に用いられている「遠近法」について、問題文の語句を用いて分かりやすく説明すること。

 ②その効果をまとめること。

 ③その効果に対してあなたが気づいたことを書くこと。

 段落は2つです。①を第1段落、②と③を第2段落にまとめましょうか。

【問題2】 筆者が芸術や美について、最も言いたかったことはどのようなことなのかを考え、それをあなた自身の体験や知っていることをもとにして説明しなさい。ただし、茶室や遠近法、花の活け方など、問題文にあるものは例として用いてはいけません。字数は四百字以内とし、段落を三つ設けてまとめなさい。字数には 、や 。などもふくめ、段落をかえたときの残りのます目もすべて字数として数えます。

 

 

 わたしの答案

(筆者が芸術や美について、最も言いたかったことはどのようなことなのか)という問い

 筆者は、外の現実に芸術の空間があるのではなく、芸術は脳の中にあるのだから、現実を歪めて非現実な世界を作ったときに、芸術が生まれる、ということを言いたかった。そのことを、茶室の遠近法と、「花は野にあるように」という言葉を使って説明した。

(それをあなた自身の体験や知っていることをもとにして説明しなさい)という問い

 絵画の世界では、写実主義というのが、まず流行り、その反動として抽象画が生まれた。写実主義は人物や風景を見たままにリアルに描くことを重視した。しかし、現実を歪めて非現実な世界を作ったときに、芸術が生まれるという考え方が、抽象画を生み出した。

 いつか箱根の美術館で見たピカソの絵は、現実を歪めて非現実な世界を作ったものであり、そうしてこそ芸術が生まれる、そう説明することができる。

 

 竹の会のみなさん、あなたたちは「問いに答える」ということをあまりにも軽視し過ぎています。平成23年に桜修館に合格したT君は、わたしの「問いに答える」という言葉を、問題を読む度に、唱えたそうです。27年に桜修館に合格した女子は、「問いに答える」とわたしが朱書したお守りを持って試験に臨んだはずです。作文を一文書く度に、問いに答えているのか、問い直してみてほしいのです。そもそも問いは何だったのか。

 

 

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